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山岳部でのマナーとルールについて

 
屋久島の貴重な自然を人類共通の財産として末永く守り伝え、そして、安全な自然体験を共有できるよう山岳部でのマナーとルールにご理解とご協力をお願いします。
生命の島として高く評価され、生命溢れる自然資源を観光立町の永久の資産として次世代に遺すため、その運用や観光のあり方を屋久島ルールとして確立します。
  1. 登山コースや難易度、自然条件や当日の天候等を事前に把握し、自分の技術や体力に見合った無理のない計画をたて、十分な装備を用意する(日帰りでも雨具、防寒具、ライト、食糧、水、地図等の装備は必ず持参すること)
    <解説> 屋久島には様々な登山ルートがあり、難易度もそれぞれ異なります。日没も夏は7時ごろですが、春や秋は5時ごろです。自分の経験や体力にあったコースを選び、余裕のある計画を組むことが必須です。
    屋久島では、毎年夏でも痛ましい事故(新しいものでは、H22GWに遭難事故(行方不明)、H22年7月末に死亡事故)が後をたちません。登山計画をしっかり立てていれば防げた事故もあります。少なくとも、白谷雲水峡の弥生杉コース・楠川歩道コース、ヤクスギランドの30分・50分・80分コース(上記は散策、自然探勝という位置づけ)以外は、すべて登山という意識で、十分な装備の上、入山する必要があります。人気の縄文杉ルートや宮之浦岳ルートも往復10時間程度かかり、完全なる登山です。安易に行くことができる場所ではありません。また、山の天気は変わりやすいと同時に、屋久島の降雨量は他地域のそれをはるかに上回ります。里部で晴れていても、必ず雨具は持参するべきです。雨で体が濡れた場合、体力を消耗して、さらなる事故につながりかねません。
    屋久島登山道マップ(PDF)
  2. 行き先や日程等は、家族や知人等に知らせておき、登山届を提出する(ガイド付きツアーで、ガイド間で装備内容、行程等の情報が把握されている場合を除く)
    <解説> どんなに万全な準備をした登山計画であっても、どうしても避けられない事故は存在します。道迷いや怪我によって登山者が下山しないことが判明した場合、捜索隊が入山しますが、捜索には初動と登山者の情報の把握が肝心です。1日捜索が遅れるだけで、捜索が後手に回り、助かる命も助からない場合があります。自分の命、仲間の命を守るために、登山行程の情報共有又は登山届の提出は必ず行うべきです。
    なお、白谷雲水峡の弥生杉コース・楠川歩道コース、ヤクスギランドの30分・50分・80分コースは該当しません。
  3. 入山前に、天候に関する警報(大雨、洪水、暴風)が発令されている際は入山しない。又、登山中に警報が発令された場合は、安全を最優先に行動する
    <解説>  気象庁では、大雨や強風などの気象現象によって災害が起こるおそれのあるときに「注意報」を、重大な災害が起こるおそれのあるときに「警報」を発表して、注意や警戒を呼びかけています。大雨、洪水、暴風は、鉄砲水や土砂崩れ、枯損木の落下事故などを引き起こす可能性があります。これらの警報が絶対的な基準とはいえませんが、発令中の入山を控えることで、事故の確率が大幅に減少することは間違いありません。当然、注意報が発令されている時にも注意が必要です。
     また、気象観測の精度・仕組みや屋久島の地理的要因から、島内のある地点の気象状況が島の反対側では当てはまらない場合があります。しかし、島内の特定の観測点(小瀬田)の気象情報、県全域の雨量データや気象レーダーによる雨雲の状況をもとに、気象台で解析の上、警報が発令されています。このため、警報発令中は屋久島地方一帯で災害や事故が起きる確率が高いといえ、防災や安全のために入山は控えるべきです。
     また、警報の発令については、屋久島地方(屋久島町全域)、種子島・屋久島地方、鹿児島県全域などの表現方法があるため、注意が必要です。
     なお、屋久島公園安房線と白谷雲水峡宮之浦線の2つの県道(その他山岳部以外では西部林道)については、それぞれ安房地区と宮之浦地区の雨量計データを基に、連続雨量が220mm/24hに達した場合、通行規制が行われます。
     入山後に警報が発令されたことが明らかとなった場合は、場所や周囲の状況、装備内容等によってとるべき行動が異なるため、状況を冷静に判断し、安全を最優先に行動することが原則となります。
  4. 落枝、落石の危険などないか、確認しながら利用する(特に休憩や自然観察等で立ち止まる際)
    <解説>  警報が発令されているときだけが、災害や事故が起こる可能性があるときではありません。警報が解除されても、前日の大雨で地盤が緩んでいる場所や、前夜の強風によって枯れ枝が樹上に引っかかっている場所、地震によって落石の恐れがある場所などがあり、それらには注意が必要です。
     管理者がいるルートでは、極力そのような危険要素を排除したり、注意喚起の看板を立てたりしていますが、全ての危険要素を予測して、それらを排除することは不可能です。特に休憩や自然観察等で立ち止まる際は、周囲に危険がないか自ら確認することが重要です。
  5. 渡渉点が増水している場合は、無理に渡らない
    <解説>  屋久島には河川や沢が多く、登山道がそれらを横切っている場所(渡渉点)が数多くあります(代表的な場所としては、白谷雲水峡、尾之間歩道の鯛之川合流点、花之江河歩道のビャクシン沢、大株歩道の翁杉周辺など)。水流には見かけ以上の水圧があります。前日の雨や突発的な強雨などで渡渉点が増水している時は、渡れそうな場合でも無理に渡らずに引き返すことが重要です。その場所で流されてしまう可能性だけでなく、複数の増水した渡渉点に挟まれて身動きが取れなくなる可能性もあります。
  6. 道に迷ったらむやみに動き回らず、沢には降りない
    <解説>  山で道に迷った場合、川や沢は場所によっては歩きやすく、そのまま海まで通じているため、道迷いせずに戻られると思うかもしれませんが、それは命取りにつながります。川や沢には大きな滝や深い淵が連なっています。沢におりてそのまま里に戻ってこられることは絶対にありません。
    道に迷わないように、しっかりとした登山計画を立てた上で、分岐などでは頻繁に立ち止まって、地図や道標、周囲の状況を確認することが最優先です。そして、不安を感じたら、来た道を引き返し、万が一、道に迷った場合は、高所を目指すか、その場を動かないことが賢明な判断です。
  7. 利用は基本的に自己責任で行う
    <解説>  屋久島の山岳利用は、特定の地域(白谷雲水峡の弥生杉コース・楠川歩道コース、ヤクスギランドのふれあいの径コース(30分)・いにしえの森コース(50分)・つつじ河原コース(80分))を除いて、登山です。登山道から、全ての危険要素を排除することは不可能であり、また、利用者が目的としている自然景観や雰囲気を守るために、必要最低限の整備・管理を行うことが妥当な場合もあります。このため、こうした限界や制約があることを踏まえて、利用者自身が主体的に自らの安全を確保することが重要です。適切な登山計画を立て、利用時に注意を払うことで、事故や遭難の可能性を極力減らすことができます。
  8. 積雪通行止め等の時は、県道、町道には車を乗り入れない
    <解説>  屋久島では一般的に12月から3月までは降雪期にあたり、これらの時期には登山口に続く県道や町道が、積雪のために通行止めされる場合があります。基本的に通行規制がかかった際は、ゲートが閉じられますが、ゲートが閉じられる前などに規制区間に進入するのは厳禁です。
    また、屋久島の県道や町道は、チェーン対応舗装がされていないため、チェーン装着による通行も舗装を傷めますので止めてください。
  9. 入山前に用を足し、山中のトイレや携帯トイレブースの位置を事前に把握する
    <解説>  屋久島山岳部の避難小屋付帯トイレのし尿は、全量搬出されており、搬出には莫大なコストがかかっています。し尿搬出コスト軽減のために、入山前に用を足してください。
    また、トイレ以外での用足しについては、量が少ない場合は環境の浄化作用が働きますが、特定の場所に用足しが集中した場合、悪臭や沢の汚染、利用の快適性の低下につながります。荒川登山口からの縄文杉登山や淀川登山口からの宮之浦岳登山においては登山者が多く、同じ場所におけるトイレ痕が目立つ状況にあります。山中のトイレや携帯トイレブースの位置を事前に把握し、それらを利用することで環境への負荷を極力抑えるようにしましょう。
    やむを得ず野外で用を足す必要がある場合は、水場の上流や湿原を避け、使用したティッシュ等は必ず持ち帰ることが原則です。このような場合であっても、1グループに1つでも携帯トイレがあれば、いつでもどこでも対応できるので安心です。
    山岳トイレの位置図(PDF)
  10. 登山道を外れない
    <解説>  登山道以外の場所に多くの人が立ち入ることで、土壌が流出し、木の根がむき出しとなり、以前は裸地でなかった場所が裸地化するなど、自然環境への負荷が生じます。エコツアーが環境負荷の原因にならないように、すれ違いの時など、やむを得ない場合以外に、国立公園計画に位置付けられている登山道や植生保護デッキ等を外れないようにしてください。
  11. 道迷いや新たな踏み分け道の発生防止のため、基本的にスプレーやテープなどの目印をつけない
    <解説> 屋久島の国立公園計画に位置付けられた歩道の迷いやすい場所や危険個所には、管理者によって道迷い防止のためのピンクテープや、立入りを防止するロープが設置されています。しかし、これらの場所以外に、独善的な目的でテープや印が、つけられることがあります。こういった紛らわしいテープは、一般利用者の道迷いや、新たな踏み分け道の発生等を誘発することから、設置してはいけません。
  12. 水場の上流や湿原を汚さない、踏み込まない、水質汚染防止に留意する
    <解説> 水場は利用者全員の共有物です。利用者が安全かつ快適に利用できるように、周囲の地形を判断し、水場の上流を汚さないように留意しましょう。また、湿原は希少な植物が生育しており、わずかな踏圧によって不可逆的な影響を受ける脆弱な存在です。絶対に踏み込まないように注意しましょう。
  13. 自分のゴミは必ず持ち帰り、山にゴミや残飯を投棄しない
    <解説>  ゴミや残飯の投棄は他の利用者に迷惑や不快感を与えるだけでなく、野生動物の餌付けや水質汚染につながります。自分のゴミは自分で持ち帰るのが、登山の一般常識です。
  14. 使用した食器等は、水場で洗わずに紙などでふき取る
    <解説>  使用した食器に付着した油分や食べカスは水質汚染の原因となります。水場で洗わずに紙などでふき取るのが、登山の一般常識です。もちろん、使った紙は持ち帰ります。山中で石鹸や歯磨き粉を使用し、排水するのも非常識です。
  15. サルやシカ等の野生動物に餌を与えない
    <解説>  野生動物が人慣れしたり、餌付くことで農林業被害の増大や生態系のバランスの崩壊、行動の異常化が起こります。野生動物に絶対に餌を与えてはいけません。
  16. 登山口の駐車場では、アイドリングストップをする
    <解説>  屋久島でのツアーが、環境への負荷を少しでも軽減できるように、地球温暖化や周辺植生への影響があるアイドリングのストップを心がけましょう。また、登山口はこれから入山する人、今下山してきた人でにぎわう交通の結節点です。利用者みんなが快適に利用できるように、快適な利用環境を作り上げていくことが重要です。
  17. 山に飼養動物を連れていかない(盲導犬、介助犬、聴導犬、猟犬を除く)
    <解説>  登山者の中には、特定の動物が近づいた際に恐怖心や不快感を持つ人もいます。屋久島の狭い登山道において、すべての利用者が快適に利用できるように、飼養動物の持ち込みは慎みましょう。
    また、屋久島にはヤクシカやヤクシマザル等の多くの野生動物が生息しています。飼養動物の持ち込みによる病気の感染等の悪影響も懸念されます。
  18. 1グループの人数は7名程度以内とし、グループであまり間隔をあけず、ひとまとまりとなって行動する
    <解説>  1グループ内の人数が多すぎると、全体の安全管理や行動把握が困難となると同時に、登山道が狭い場所のすれ違い時に多大な時間がかかるなど、円滑な行動ができにくく、他の利用者に少なからず迷惑をかけることとなります。さらに、すれ違い時や休憩時に融通が利きにくいため、周辺植生への悪影響も考えられます。
     屋久島の山岳利用は、特定の地域(白谷雲水峡の弥生杉コース・楠川歩道コース、ヤクスギランドの30分・50分・80分コース)を除いて、1グループあたりの人数は、ガイドを含み9名程度以内とし、それ以上の人数となる場合には、2つのグループに分かれて行動するのが理想です。
  19. 常に周囲には気を配り、早いグループが後ろから来た場合は道を譲る
    <解説>  グループによって行程や歩く速さが異なるのは当然です。各グループが快く利用できるように、グループの先頭の人と最後尾の人が連携して声をかけ合って利用しましょう。
  20. 基本的に登り優先で道を譲り合う
    <解説>  登山においては、往路の人優先で道を譲るのが原則です。ただし、場所や利用者の状況によっては、譲りやすい人が道を譲った方がよい場合もあるので、ケースバイケースで判断するのが妥当です。
  21. 避難小屋や休憩所は譲り合って使用する
    <解説>  避難小屋や休憩所のスペースには限りがあります。3連休以上の連休時、ゴールデンウィーク、シャクナゲの開花シーズン等は特に小屋利用者が多くなりますので、宿泊を予定しているときは、小屋に入れない場合に備えて、テントを持参することが理想です。また、小屋における人数分以上の場所とりは控え、遅めに小屋に到着した人とも声をかけ合い、譲り合って小屋を使用しましょう。小屋へはおそくとも16:00ごろまでには到着できるように、登山計画を立てるのが理想です。
    なお、テントは小屋の周辺に限って設営することができますが、周辺植生への影響に配慮する必要があります。
  22. コンロを利用する際は、周囲の状況に気を配る
    <解説>  コンロ等火器を使用する際は、周囲の人の迷惑にならないように気を配りましょう。小屋の中で火器を使用することは、火事等を防ぐためにも原則禁止です。
  23. 荘厳な雰囲気を壊さないように、非常時以外での携帯電話の通話は控え、他の利用者に迷惑となるような方法で、楽器、ラジオ等による騒音を発しない
    <解説>  屋久島の多くの登山者は、風景や動植物といった目に見える情報とともに、沢のせせらぎや鳥のさえずり、木々の葉のすれ違う音や、逆に静けさといった耳からの情報もあわせて楽しんでいます。景色や音が一体となった荘厳な雰囲気を壊さないように、携帯電話や楽器、ラジオ等の利用には配慮が必要です。
  24. 祠などの神聖な場所の環境をけがさない
    <解説>  奥岳や前岳の多くの山頂部の岩陰等には祠が設置されています。このような場所は人目に付きにくく、周囲にゴミが捨てられるケースも見られますが、絶対に汚さないようにしてください。また、屋久島の山岳自体が信仰の対象となっており、祠などの神聖な場所以外も汚さないように心掛けることが大切です。
  25. 屋久島町、鹿児島県、林野庁、環境省の職員、屋久島公認ガイドの指示に従う
    <解説>  山岳部等においては、自然環境の保全、利用者の安全管理や施設の管理のために、屋久島に関係する行政機関の職員が巡視を行っています。また、エコツーリズム推進協議会に登録されている多くの屋久島ガイドがツアーを実施しています。こういった知識や経験を持った職員等の助言は、安全上又は自然環境の保全上非常に重要なものですので、従ってください。逆に、利用者からのルートの状況や生物の名前等についての質問もお待ちしています。